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そ「総合政策」ではあるものの、中身は慶應や中央、立命館とは大きく異なるものであった。つまり、基本理念によれば、関西学院大学の総合政策学部は、日本で初めてヒューマン・エコロジーを基本的な視座として、これに社会科学や一部工学などの諸科学を総合的に組み合わせて、現代社会のあり方を追求する研究・教育組織である。ヒューマン・エコロジーへの深入りは紙数の関係で避けたいが、要は社会学と生物生態学の総合であり、人間社会と自然環境との相互関係を総合的に分析する学際的な研究分野ということになろう。
同学部の独自性は、専門教育科目中で1年次での履修が義務づけられているものとして、「総合政策入門」以外に「ヒューマン・エコロジー入門」が挙げられていることからも分かる。そして、専門科目を見ても、政治学・行政学や政策科学系科目の占める比重は他の政策系学部にくらべ格段に低い。政治学の専任教員は僅か1名であり、行政学に至ってはゼロである。逆に環境・エコロジー関係科目、都市問題関係の科目の多さがユニークである。同時に、言語教育科目は計18単位とかなりのウエイトを占めるが、それを含む総合教育科目(要するに一般教養科目)のウエイトは全128単位中40単位であり、専門教育科目(コンピュータ演習も含む)は88単位と、熊本県立大学ほどではないが、専門重視の姿勢が見受けられる。
しかし、大学側もヒューマン・エコロジーだけでは不十分と考えたのか、3年次から学生は「エコロジー政策」「都市政策」「国際発展政策」の3つの専攻からいずれか1つの専攻を主専攻として選ぶこととなっている。都市政策専攻や国際発展政策専攻の授業科目をみれば、やはりこの学部が総合政策学部であったことを痛感させられるが、立命館でいえば「政策過程科目」・慶應でいえば「学部内基礎専門科目」に当たる科目の手薄さがどうしても目立ってしまう。繰り返しになるが、総合政策(政策科学)とヒューマン・エコロジーの総合という現行のカリキュラムではなく、むしろヒューマン・エコロジーに徹して「環境政策学部」として地球環境・地域環境の保全に取り組むための徹底した問題志向的なカリキュラム編成を細めば、学部の性格がもっと鮮明になったのではなかろうか。
ただ同掌部の環境問題重視の教員人事として高く評価されるのは、多くの大学が環境問題や環境政策を理工系出身の人間に任せてしまい、講義内容が地球環境問題を中心とした技術的な問題に環境問題を矮小化させる傾向があるのに対し、関西学院総合政策学部が自然保護関係者の間でバイブルとなっている『自然保護の法と戦略』(有斐閣)の著者であり、日弁連が自然享有権を提唱した際に主導的な役割を果たした弁護士の山村恒年氏を環境法とアセスメント担当の教授として迎えている点である。産業廃棄物処分場建設や開発

 

 

 

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